2007年12月31日月曜日

北ア:槍平で雪崩・7人がのみこまれる

徳島岳人ク2人重体 北アルプス槍ケ岳で雪崩 徳島新聞社

1日午前0時15分ごろ、岐阜県高山市の北アルプス槍ケ岳(3、180メートル)の中腹で雪崩が発生し、複数のパーティーの登山者数人が生き埋めになった、と登山者から119番があった。高山署が通報者と連絡をとったところ、徳島県人4人を含む2つのパーティーの計7人が巻き込まれ、男性4人が意識不明の重体という。県警山岳警備隊は天候が回復次第、救助に向かう。

県人ら4人死亡確認 北ア槍ケ岳の雪崩遭難 徳島新聞社

同県警高山署によると、1人が自力で脱出、6人を別の登山者が救出し、近くの槍平小屋に運んだが「徳島岳人クラブ」(徳島県)の団体職員市川啓二さん(51)=徳島県松茂町、大学助教西井健さん(31)=徳島市=と「三峰山岳会」(東京都)の内装業越前屋晃一さん(60)=神奈川県海老名市、会社員金指伸一さん(45)=東京都目黒区=の死亡が確認された。

岐阜地方気象台によると、新雪が硬い雪の上を滑り落ちる表層雪崩の可能性が高いという。1日朝、救助に向かった県警山岳警備隊が、午後に小屋に到着して4人を確認した。

現場は積雪3メートル以上とみられ、岐阜地方気象台は岐阜県の飛騨地方北部に大雪警報と雪崩注意報を出し、警戒を呼び掛けていた。

越年登山、突然の悲報 槍ケ岳の雪崩2県人死亡 徳島新聞社

中日新聞:北ア雪崩 「安全地帯」で遭難 山岳関係者ら困惑「対策難しい」:岐阜(CHUNICHI Web)

1973年、現場から400メートル上方で京大生5人が亡くなった雪崩事故の救助に加わった元北飛山岳救助隊長の内野政光さん(64)は「雪に埋まってもすぐ脱出できるよう、雪山でテントを張るときは、ズボンのポケットにナイフを入れておく必要がある」と、登山者に自衛策を促す。

高山市の飛騨山岳会では、雪崩の危険性を予測する「弱層テスト」を会員に指導している。登山道の入り口で、スコップで雪を掘り、日光や雨で解けた雪の上に新雪がかぶさって雪崩の原因になる「弱層」がないかどうかを確かめる。同会の木下喜代男会長(63)は「このテストは、まだあまり普及していない。欧米と比べ、日本では雪崩に無関心なのではないか」と指摘している。

北ア雪崩で4人の遺体を収容 槍ケ岳、生存者は下山 : 47NEWSS

ヘリで4遺体収容 槍ケ岳遭難で岐阜県警 : 47NEWSS(動画)

掘り出して人工呼吸…北ア・雪崩事故、必死の救出劇(読売新聞) - Yahoo!ニュース

槍ケ岳雪崩:寝た位置で明暗 死亡者はテントの両端 - 毎日jp(毎日新聞)

岐阜県高山市の北アルプス槍ケ岳で先月31日に発生した雪崩で、窒息死した男性4人はそれぞれ二つのテント内の両端に寝ており、真ん中にいた男女3人が助かった。結果的に、寝ていた位置が生死を分けた形になった。

仲間捜し必死に雪掘る 槍ケ岳の雪崩 - 岐阜新聞 Web

31日深夜。元旦の槍ケ岳登頂に備えて寝静まる登山者のテントを「突風が吹いたかのような」ドーンという強い衝撃が揺さぶった。現場周辺に寝泊まりしていた登山者は皆、雪崩の音はなかったと不気味さを振り返った。

竹内さんは、全身にのしかかる強い圧力を感じて目を覚ました。手探りで手にした割りばしを使ってテントを引き裂き、手で雪をかき分けると、ぽっかりと空が見えた。自力ではい出したのは竹内さんだけ。「おーい、助けてくれ」と叫びながら、友人の埋まっている辺りを素手で必死に掘り続けた。

徳島岳人クラブの鈴木基男さん(47)と長瀬美代子さん(30)は、身動きが取れないテントの中でもがき続けた。「息ができず、何が起こったのか分らなかった」。鈴木さんの意識は次第に遠のいていった。長瀬さんは上半身の自由が利いたため、テントを歯で食いちぎり、右手で雪をかいた。しかし、一向に空は見えなかった。

現場から約20メートル離れた冬季小屋に宿泊していた別のパーティーが事態に気付き、外に飛び出してきた。冬季小屋の宿泊者で第1通報者の北島英明さん(48)=横浜市=は周囲を見渡してがくぜんとした。「来た時と全く景色が変わっていた」

「この辺りか」「急げ」。他の登山者ら約20人と、竹内さんが雪を夢中で掘った。10分後、三峰山岳会のテントの中から越前屋晃一さん(60)、金指伸一さん(45)を発見。2人の顔面にはテントのシートが密着し体は冷たかった。

徳島岳人クラブのテントは1メートルの深さの雪に埋もれていた。雪崩発生から約1時間後の午前零時30分、北島さんは雪の中から突き出た木の枝のようなものが動いているのを見た。「まさかと思った」が、長瀬さんの右腕だった。間もなく鈴木さんも救出され、人工呼吸で息を吹き返した。いずれのパーティーも、テント中央で寝ていた人は窒息を免れ命拾いした。

鈴木さんは会見で「リーダーを信じていた。まさか雪崩の起きる場所だとは思わなかった」と振り返り、また「メンバーが亡くなったことがまだ信じられない」と力なく語った。

中日新聞:登山者「判断ミスでない」 登山自体に疑問も:社会(CHUNICHI Web)

「判断は間違っていなかった」。現場に居合わせて救助に携わった登山者たちは、降りしきる雪の中を山に入り、テントを現場に張ったことについて、口をそろえた。雪崩はベテランたちの常識を超えたという。

高山署によると、被害の範囲が狭いことから、雪崩は槍平小屋から右俣谷を挟んで西側にある奥丸山の斜面で発生し、先端部が流れ着いたとみられている。大量の新雪が固い古い雪に積もって不安定な状態になり、何らかの衝撃で新雪部分が一気に滑り落ちる表層雪崩の可能性が高い。

救出された徳島岳人クラブの鈴木基男さん(47)は2日昼の会見で「雪崩がありそうな場所ではなかった」と悔しがった。槍平小屋はかつて右俣谷の対岸側にあったが、1973年に京大山岳部をのみ込む雪崩が発生するなど被害が相次いだのを受け、30年ほど前、平地に囲まれた現在地に移転。雪崩被害はなくなった。北アの山岳ガイドの内野政光さん(64)は「安全なはずだった。奥丸山の斜面は夏に崩壊を続けており、地形が変わっていたのかも」と推測した。

民間の北飛山岳救助隊の竹腰藤年隊長(59)は「雪があれば雪崩はどこにでも起きる。悪天候が分かっているのに登るべきではない」と指摘した。

雪崩 現場で30年余前も発生 - NHKニュース

北アルプスの槍ヶ岳で4人が死亡する雪崩が起きた現場は、多くの登山者に雪崩の起きにくい場所として知られる一方で、30年余り前にも雪崩が発生して、山小屋に被害が出ていたことがわかり、警察では、雪崩が起きたときの状況を詳しく調べ、あらためて安全な場所かどうか検証することにしています。

東京新聞:【関連】かき消えた新年の誓い 槍ケ岳雪崩 『頑張れ』必死の救出実らず:社会(TOKYO Web)

ただ、この冬一番の強い寒気の流入は予想されていた。岐阜地方気象台は二十七日から年末年始の大雪に警戒を呼び掛けた。三十一日早朝には大雪警報も出て、北アへの越年入山者は例年の三分の一だった。

鈴木さんは「天気は必ずよくなるというリーダーの判断」と振り返る。

両グループは槍ケ岳登頂を目指し、三十日夕に槍平にテントを設営。鈴木さんらは携帯電話で気象情報をチェックし、危険な山頂のアタックは避け、安全と思われた小屋前で待機していた

三十一日夜、予想を超える降雪量に、三峰山岳会のテントでは「あす下山しようか」、徳島岳人クラブ側では「道が雪で消えていれば中止しよう」と話し合っていたところだったという。

アルプス雪崩研究所(長野県白馬村)所長の若林隆三元信州大教授(67)=雪氷学=は「もともと槍平は氷河と雪崩が作った地形で、大規模な雪崩の通り道ともいえる」と分析。「山に入ったことは無謀とは思わないが、これだけ積雪があればいつ雪崩が起きても不思議ではない。危ないと感じて引き返すべきだった」と話している。

若林教授の指摘は正しいのだろうが、山小屋のあるところで雪崩の被害に遭うとは、普通は考えないだろう。雪崩が頻発する箇所では大きな木が生えていないという点は、雪崩危険箇所の判断ポイントの1つだが、小屋のあるところで雪崩が起こるのは盲点ではないか。幕営場所に関してのみ言えば、判断に誤り、というのは酷と思う。

<槍ケ岳雪崩>34年前にも同様事故 危険性への切実感は?(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

snowinfo| 雪崩が起こるような所ではない

そこまでわかっていて、メディアは 「雪崩が起こるような所ではない」 といった言葉を切り取り、それをキャッチコピー化する。

事故の本質を突くでもなく、啓発にも役立たたず、 むしろ、異常なことが起こったであるかのような誤解を 雪崩の基礎知識を持たぬ人に広めてしまう まったくもって無意味なキャッチコピー。。。

奥丸山からの沢状地形の規模を考えれば、 小屋近くまで雪崩が到達しても、特に不思議ではない。 恐らく、数十メートル北側にテントを張っていれば 悲劇はなかったかもしれない。

♪パンパカパ~ン♪ また死にました Part 71

>>406
尾根で起きた雪崩は、谷へ逸れていく事になるので、 槍平小屋は、一番傾斜のゆるい尾根の末端に立て直されている。 今回は、距離は遠くても、「大きな」雪崩がおきやすい沢の延長線上に 幕営したパーティがやられた。 槍平小屋の建て直しの時に行われた判断が、登山家の常識になっていない。 話題になっている雪崩の走路の長さ、幅は、 雪崩報告書では必ず記載されている。

槍平小屋の周辺 - Yahoo!地図情報

最初のコメントに削除線を付けたが、建て直された槍平小屋が尾根の延長線上を選んで建てられているのに対し、今回事故にあったパーティは雪崩の堆積区となる沢の中にテントを張っていたことになるらしい。ということは場所の選定にも判断ミスがあったということになる。しかし、近くに小屋があったら油断してしまう人間は多い気がする。今回の事件を教訓としたい。

ただ、2つ玉低気圧による強烈な西高東低の気圧配置によって予想される悪天候にも関わらず入山したことや、幕営場所の選定に注意が不十分だったことをもって責めるのはたやすいが、私としては snowinfo の筆者の書かれていることが全てだと思う。以下に引用する。

「こんな天気の時に入って・・・・・・」と行動を責める人もいるが とてもそのような気にはなれない。

なぜなら、自身が自由に山で活動するため担保として 他者に対しても、自由に山で活動できることを保証しなければ フェアとはいえないから。

判断ミスはあった、 でもその対価は命で支払った それ以上、何を言う必要があるのか。