18:54携帯電話が鳴った。発信者を見ると町民課のTH、遭難だろう。「ダイグラ尾根で転落、同行していた妻が飯豊山壮に下山して通報」
遭難者は65歳男性、妻と二人で弥平四郎口から入山、11日は祓川山荘、12日に本山小屋に宿泊し、13日にダイグラ尾根を下山した。発生時刻は分らないが、逆算していくと16:00~16:30頃と考えられる。
妻の前を歩いていた夫が、突然に左(桧山沢側)の急峻な藪に転落した。登山道から5m下に止まっていた彼に妻は近付いたが、彼の意識は朦朧としており(彼にはこの前後の記憶が欠損している)、握力もなく、自力では這い上がれない状態だった。
脇に岩溝があり、そこに落ちたら大事になると妻は必死になったが、彼を引き上げることはできなかった。そこでザックが邪魔なのだろうと考え、ザックを外し登山道まで上げた。しかし彼はさらに5m転落した。
妻が再度下降を試みるが、岩が出てきたので自分では無理と判断し、二つのザックを登山道に残し、単身で飯豊山壮に救助を求めた。
遭難者によると、救助隊が到着する間は時間的感覚がなく、幻聴があった。筋肉に力が入らず、落ちて行くことを止めることはできなかったとのことである。