北アルプス・黒部川支流の標高およそ1050メートル付近の沢で26日、32歳の男性がおよそ15メートル転落して太ももの骨を折る大けがをし、27日午前ヘリコプターで救助されました。
26日午後2時半ごろ立山町芦峅寺の標高およそ1050メートル付近にある黒部川支流の棒小屋沢で神奈川県川崎市の公務員、太田幸介さん(32)が仲間と沢を下っていたところ、ロープを固定するため岩の割れ目に打ち込んでいたハーケンと呼ばれるくぎが抜けておよそ15メートル下に転落しました。
太田さんはその際に左足を強く打って歩けなくなり、27日9時半過ぎに仲間から山小屋を通して警察に救助要請が入りました。
これを受けて出動した県の消防防災ヘリコプターで太田さんは救助され病院に運ばれましたが左の太ももの骨を折る大けがをしていたということです。
警察によりますと、太田さんは8月25日に長野県側から入山し、9月1日に馬場島から下山する予定でした。
KNB NEWS|KNB WEB - 北アで男性転落し左足の骨を折る大けが
26日午後2時半ごろ、北アルプス黒部川支流の標高およそ1050メートルの棒小屋沢で、神奈川県川崎市の公務員太田幸介さん(32歳)が山岳会の仲間と2人で沢下りをしていたところ、およそ15メートル下に転落しました。
太田さんは左ひざを強く打って歩けなくなり、26日夜はその場でビバークし、27日、仲間が山小屋に救助を求めました。
懸垂支点が岩ごと破壊・ハーケンのすっぽ抜けという、第一線で5年以上も渓谷登攀をやり続けている僕らにしてはあまりにもお粗末な事故が物語っている。現場では、支点を打った岩とは別のスラブにボルトを打つという選択肢も口に出していたが、結局は、時間がもったいないということ、岩を傷つけるということから1本のボルトを打たなかった(打てなかった)。やはり迷った選択肢の方が正しかった。このことからも、2人の安全に対する意識が希薄になっていたといえよう。
弁解の余地がないことは承知している。大事故を起こした事実は覆しようもないし、ヘリも使うなど、多くの人に迷惑をかけた。だからこそ、事実を正しく理解してくれた上での批判や指摘は素直に受けたい。
今回改めて感じさせられたことを二言ほど。
沢では高巻きがあり、そして灌木やハーケン・ボルトでの懸垂がある。しかし、再登されている沢、人気のある沢の場合、残置支点を使うことも多いだろう。しかし、懸垂下降は極めて基本的な技術でありながらも、やはりもっとも無防備になりやすい作業であり、かつ起こってしまってからの防御を取りにくい。そして、致命的な事故になりやすい。だからこそ、支点のチェックや安易な作業の省略は避けることが大事であり、この事実を通じて、もう一度技術というものを見直すきっかけとしてくだされば幸いである。
そして、難易度の高い沢へ向かう方へ。側壁が発達している谷は、どうしても救助が困難になる。今回、事故が黒部で起きたということで、狭い谷筋へも入ってくれたことが迅速な救助にピックアップにつながったが、これは黒部や谷川などの一部の山岳地帯だけが該当するレアケースといえよう。ピックアップできなかった場合は、地上からの搬出となる。地上からの搬出はどこであろうとなかろうと、滝がかかる沢では困難であることは間違いがなく、日数もかかる。事故者の精神力も試される厳しい時間となることを認識するべきだ。