新しい遭難事故ではありませんが、記述が興味深かったので、取り上げておきます。
万に一つの可能性に備え、現場でテントを張って数日間K君の還りを待ったが、ついに第一次捜索は打ち切りになってしまった。
我々の苦闘が始まった。
本格的な雪解けが始まると現場付近と池の谷に捜索キャンプを常設し、交代で毎日のように巡回した。万年雪の狭くて深い谷は山の芽吹きから忘れられたようだ。
なかなか溶けない雪に、ついにはチェーンソーを担ぎ上げて、落下予想地点の氷の切り出しをしたりもした。
短い夏が過ぎた。山の紅葉が見事になると、それはいつ初雪が来てもおかしくないという合図でもある。谷の氷も堅さを増し、時折チェーンソーがはじき返されるようになった。
発見時刻は、9月29日午前8時56分、月命日の同時刻であった。
自分の経験したものでも、遭難事故の発見時には、不思議としかいいようのないことが実際ありました。