2012年5月6日日曜日

北アルプス:遭難者は中高年 問題点を専門家に聞く - 毎日新聞


NHK


北アルプス:遭難者は中高年 問題点を専門家に聞く
毎日新聞

悲劇が相次いだ中高年によるゴールデンウイーク(GW)の北アルプス登山。遭難の背景にある、この時期特有の北アルプスの危険性や遭難者の大半を占める中高年登山の問題について、専門家に聞いた。

 ◇急変しやすい天候

地元山岳ガイドらによると、GWの北アルプスは天候が急変しやすく、雪が滑りやすいなど危険が多い。
長野地方気象台によると、4日夕から夜にかけて寒気を伴った気圧の谷が上空を通過し、白馬岳周辺を含む広い範囲で雨が降った。上空3000メートル付近では約20メートルの強風が吹き、山頂や尾根筋はふぶいていたとみられる。
北アルプス・爺ケ岳周辺の山岳ガイドを務める大町登山案内人組合の遠山充事務局長(61)によると、4日は午後3時ごろからふもとでも雨風が強まってきたといい、「急に天気が崩れ、手持ちの装備や道具で雨風をしのげず、遭難したのでは」とみる。遠山さんは「この時期に軽装で来る登山客が時折いる。登山口で見かければ注意しているが、そのまま登ってしまう人も少なくない」と話す。

穂高岳周辺をガイドする上高地登山案内人組合の奥原宰(つかさ)組合長(56)は「5月は晴れれば雪の照り返しで夏山より暑く、ふぶけば冬山の装備が必要になる。一番難しい時期だ」と指摘する。「悪天候もあって想定以上に行程時間が延び、そのうち体温を奪われたのかもしれない」と話す。

 ◇中高年の登山に落とし穴

90年代から続く中高年の登山ブーム。故深田久弥氏の著書「日本百名山」に取り上げられた北アルプスなどの高山を目指す中高年登山者が増え、遭難事故は増加している。
登山医学に詳しい京都市の高折病院名誉院長、中島道郎さん(81)は「中高年は若者より皮下脂肪が少ないため体温を奪われやすい。服装に対する知識、準備が乏しいと遭難につながる」と話す。メンタル面でも要注意。中島さんは「年を取ると、悪天候でもこの機会を逃せばもうこの山に登れないのではといった心理が働く。無理せず行程を中止したり、引き返す勇気が必要だ」と注意を促す。
東京都の登山用品店「カモシカスポーツ」の営業部長、笹原芳樹さん(53)も「近年は70〜80代の愛好者も珍しくないが、体力がなくなっていることを自覚し、トレーニングを日々欠かさないようにしてほしい。日程も余裕を持ったものに」とアドバイスする。
日本登山医学会の増山茂事務局長(64)によると、寒さ▽暴風▽体がぬれる−−が低体温症発症の3条件といい、「みぞれでぬれて体熱を奪われるパターンが多いので、高齢者の場合は十分な準備が必要だ」と指摘する。
警察庁によると、10年の山岳遭難は1942件・2396人で統計がある1961年以降では最多だった。中高年ばかりでなく若い女性の「山ガール」ブームもあり、01年の1220件から約700件増加した。10年の遭難者の内訳は、75%以上が40歳以上の中高年で、55歳以上が1435人と全体の6割を占めた。都道府県別では長野県が最多の213件・231人だった。【川名壮志、平元英治、浅野翔太郎】


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